法務のつぶやき

法務の観点からの時事の寸感。

日馬富士問題にみる日本の特徴

1.はじめに

 

とある会社で法務をやっているリーマンが叩かれない/情報漏洩しない/特定されない程度に世の中の事項についてコメントをしてみるもの。

特に業務上困ったトピックについての覚書・共有。

 

いきなりこのお題からというのもややミーハーな気はしますが、とりあえずニュースがその話題だらけなので。

暴行の際に何があったのかなどは警察も入っていることですし、見てない側としては憶測しかできないので割愛。

 

2.貴乃花親方がしたこと

 

今日、理事解任が正式に決議されました。まぁ色々態度的に問題があったかどうかはさておき、彼がしたことというのは結局外部の警察に対するwhistleblowingに近いんですよね。

 

内部が信用ならないので、外部の第三者機関へ調査をゆだねる、これがwhistleblowingです。

 

大体ちゃんとした企業では内部に独立した監査機関があり、内部の相談窓口とするほか、外部の弁護士事務所も合わせて外部の相談窓口とし、コンプライアンス絡みの問題洗い出し機構としているところが多いです。

一方、海外では会社関係の窓口に相談すると握りつぶされたり自分の処遇が危険と感じるケースで、完全な外部に告発するというpracticeがあります。この外部とは公益団体であったり、当局だったりします。最近では当局も事件摘発で得た罰金の数パーセントを告発者に与えるなどのインセンティブを与えたりするなどの工夫をしており、それによる法令違反の発覚などもあるようです。

 

さて、話を戻すと貴乃花親方がやったことは、ある意味協会内部で起こった事件の外部通報のようなものです(実際は警察への届け出ですが)。なぜそうしたかといえば、協会内部で通報しても握りつぶされてうやむやになるという危惧があったからです。

そして、警察へ協力する一方で協会には黙秘を続け、その結果として礼を失するとして理事を解任されました。

しかしながら、これを理由に処罰されるのであれば公益通報者保護法など、勇気あるwhistleblowerを守るという制度に反するものなのではと感じざるを得ません。もう事件が明るみに出た後に協会に協力しなかった、ということについては若干の疑義ありますが、まぁ貴乃花親方がいかに協会を信用していなかったかというのが垣間見えます。

 

もう事件が明るみに出た後に協会に協力しなかった、ということについては若干の疑義ありますが、内部に報告することで証拠隠しや口裏合わせなどがありうることを考えれば、必ずしも✖というわけではないように思えます。協会が第三者委員会などを立ち上げて調査しているのに非協力だったということならともかく。

 

3.まとめ

 

某審議委員長が信用ならないという個人的な感情を抜きにしても、貴乃花親方への処分はどうしても報復措置にしか見えません。理事長は辞めるべきだったと思いますし、加害者側の親方と同格処分というのもイケてません。

このあたりに、たとえ正しい反発をしている人であっても組織や地位を守るためなら容赦なく報復するきらいがある日本の組織的な縮図があるような気がしました。海外はこういう人を守ろうという制度が厚いですから。

多分、同じような事件が株式会社内で起こって、役員が内部通報制度が機能していないがゆえに警察に通報、その後警察にのみ協力し続けたが、役員会で「礼を失したので」解任されたというニュースが出た場合、(委任契約上の義務違反になるのかは別途検討は必要として)世間一般的には批判の対象になるのではと思うんですが、相撲協会だからOKという理屈はどこにあるんでしょうかねぇ。